あらゆる詩誌の投稿欄の中で最難関と言われる現代詩手帖の投稿欄。一度は入選や佳作に選ばれて投稿欄に掲載してもらいたいものですね。
投稿欄に載るための一番の対策は何でしょう?それはやはり小手先の技術を身につけることではなく、自分の詩を追求し、自分にとって満足のいく作品を作ることでしょう。
だがしかし。だがしかし、なのです。それはわかっている。それはわかっているけれど、そうは言うものの何か対策らしいものはないだろうか?
そこで私は考えました。
「次期選者があらかじめ分かっていれば、せめて可能性の高そうな人が分かっていれば対策をたてられるのではないだろうか?」
これは一理あるのではないでしょうか。なぜなら新しい選者になるとその後の2~3ヶ月は、どういう傾向の作品が選ばれるのかが我々投稿者にとって最大の関心事になるからです。選者によって審美眼や好み、相性があることは事実でしょう。
「次期選者を事前に予想していたらもっと対策が立てれたのに…… 」
よく考えてみれば、たとえば高校、大学受験だって過去問を解き、その高校や大学の試験問題の傾向と対策を練ります。さらには模擬試験を受ける。それなのに詩の投稿になると「詩はそういうものじゃないから」と謎の言い訳をして対策をまるで立てず、それを正当化するという体たらく。そういう状態に陥っていはないでしょうか?
と、冗談はさておき、次期選者を予測するというのも一興かと思い本記事を書いてみました。
今回の記事はこのような人に向けて書かれています。
- 2023年の現代詩手帖投稿欄の予想される選者を早く知っておきたい
- 予測される選者の詩集を早めに購入し好みを把握しておきたい
- 現代詩手帖の投稿欄の選者には選ばれる傾向があるの?
本記事をもとに投稿欄の対策や、あらたな詩人を知る機会になったら嬉しいです。
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現代詩手帖の投稿欄選者の予想
ではまず、私が予想しました2023年の現代詩手帖投稿欄に選ばれる可能性の高い3名の詩人の名前を挙げさせて頂きます。
- 榎本櫻湖
- 峯澤典子
- 高塚謙太郎
いかがでしょうか。意外だったでしょうか。あるいは予想通りだったでしょうか。それでは私が今回この3名を挙げさせてもらった根拠を説明していきます。
過去13年の実績から見えてくる傾向
まずは過去13年の選者を見てみることにしましょう。当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、詩誌なのでよく目にする方々の名前が並んでいます。
このリストから少なくとも過去13年のうち2回選者を担当している方はいない、ということがわかります。つまりこのリストに名前が挙がっている方からは2023年度の選者は選ばれないことがわかります。
また参考情報として選者を担当していた時期の各選者の年齢を調べてみました。
特に60代で選者を担当している方が多いことが分かりました。過去13年の選者たちの平均年齢は「51.5歳」となっています。
現代詩手帖の投稿欄の応募数はおよそ月で約1000作品。そこから編集者側で作品数を絞るにしろ、ある程度時間的に余裕がない方でないと選者を担当するのは難しいというのが理由かもしれません。
また一方で30~50代の仕事や生活が忙しい方も大勢いるわけで、時間がない中で作品に目を通し、講評までしてくださる選者の方には改めて感謝すべきでしょう。
▶ちなみに唯一の20代選者は「文月悠光」さんです。
ここは知らないけれど、知っている場所
投稿欄の選者に選ばれる傾向と共通点①
投稿欄の選者になっている26人について何か傾向や共通点はないのかと思い、過去の主だった詩の受賞歴について調べてみたところ意外な共通点が見つかりました。こちらの表を見てください。
一人で複数の賞を受賞している場合もありますが、現代詩手帖、高見順賞、鮎川信夫賞、萩原朔太郎賞を受賞している人が多数であることがわかります。
これをさらに過去5年に絞ってみます。
すると傾向が変わりました。直近の5年でいえば、選者になる方の多くが受賞しているのは現代詩手帖賞、H氏賞であることがわかります。逆に高見順賞、鮎川信夫賞、萩原朔太郎賞は現代詩手帖の投稿欄選者という観点から見た場合、重要度が下がっています。
投稿欄選者に選ばれる意外な経歴
受賞している詩の賞の傾向はわかったものの、それではまだ決定的なデータとは言えません。私は思潮社のバックナンバーを眺めながらふとあることに気がつきました。
「月評」を担当している人って選者もやっていることが多くないか?
というわけでこちらも過去13年にわたって調査をしました。
その結果、過去26人の選者のうち実に7人が「月評」の担当者でもあったのです。
この意外な共通点から「月評」を担当したことがある詩人が条件としてあがってきました。
データから導かれる2023年の現代詩手帖投稿欄の選者は?
あらためて現代詩手帖の投稿欄選者に選ばれる条件や前提をまとめていきましょう。
- 過去13年の中からは選ばれない(再選出はない)
- 現代詩手帖賞、あるいは、H氏賞を受賞している
- 現代詩手帖において「月評」を担当したことがある
それでは現代詩手帖賞、H氏賞の過去13年の受賞歴の中から「月評」を担当したことがある詩人を特定してみましょう。
すると条件にあてはまるのはこの3人です。(※灰色箇所は選者歴ありです)
結論。2023年の現代詩手帖投稿欄の選者はこの3名から選ばれる可能性が高いです。
- 榎本櫻湖(現代詩手帖賞+月評担当)
- 峯澤典子(H氏賞+月評担当)
- 高塚謙太郎(H氏賞+月評担当)
特に峯澤典子さんは選者候補の最右翼と言ってもいいのではないでしょうか?2012年~2016年のH氏賞の受賞者で選者をしていないのは峯澤典子さんだけです。
▶峯澤典子さんの詩集はこちら。
候補者3名の詩集紹介
それでは今回選者予想として挙げさせて頂きました3名の詩集を紹介します。少しでも興味を持って頂けたなら是非、詩集の購入をお願いします。
- 『増殖する眼球にまたがって』(思潮社・2012年)
- 『空腹時にアスピリンを飲んではいけない』(七月堂・2014年)
増殖する眼球にまたがって
- 『水版画』(2008年・ふらんす堂)
- 『ひかりの途上で』(2013年・七月堂)
- 『あのとき冬の子どもたち』(2017年・七月堂)
ひかりの途上で
- 『さよならニッポン』(思潮社・2009年)
- 『カメリアジャポニカ』(思潮社・2012年)
- 『ハポン絹莢』(思潮社・2014年)
- 『sound & color』(七月堂・2016年)
- 『量』(七月堂・2019年)
量
終わりに
2022年の現代詩手帖の投稿欄は良くも悪くも話題となっています。 これは思潮社や選者たちの思惑通りであった、という可能性もないわけではないでしょう。 もしそうであればかなり思い切った戦略を打って出ていると言えるかと思います。
その場合、もしかするとこれまでの傾向を大きく裏切ってくることも考えられます。 たとえば、女性2名での選者や、過去13年の選者の中から再選出などがあってもおかしくはありません。 もしそうなれば、むしろ嬉しい限りです。
個人的には「これから詩を読み、書くひとのための詩の教室」という書籍の出版で話題になっている松下育男さんの再選出、 詩の賞を多数獲得している、最果タヒさん、マーサ・ナカムラさん、三角みづ紀さん、などから2人でも面白いと思います。
それでは予想があたるかどうか楽しみにしながら詩作に取組んでいきましょう。
(※峯澤典子さんが的中しました!)
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