日本の人口減少はもはや不可避で国内市場は縮小します。
日本企業の多くは、早晩、海外に活路を見出す方法を選ばざるを得ません。もしかすると個人でその方法を選ぶことになるのかもしれません。
そんな世の中で「海外営業」という職種に興味を持ってはいるものの、実際にどんな仕事をしているのかよく分からないという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では以下のような疑問について解説していきます。
・海外営業の仕事って具体的に何をするの?
・どんなスキルが必要なの?
・海外営業のメリットやデメリットって?
僕は海外営業歴20年、現役の海外営業マネージャーをしています。
そんな僕が実際に日々取り組んでいる仕事について具体的な例もまじえて分かりやすく解説していきます。
まずは僕の勤めている会社概要はこちらです。同じような業界、規模での海外営業に就きたい、転職を狙っている、という方であればお役に立てるかと思います。
- 業界:製造業
- 職種:海外営業
- 業務:B to B海外営業
- 企業規模:1,000人
特別なスキルが必要なの?という問いに対しては「英語力」が結論になります。
ただTOEICでの高得点は必要なく最低限のコミュニケーション能力があれば十分です。
本記事を読んで海外営業の仕事のイメージをつかんでもらえたら幸いです。
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海外営業とは?
まず海外営業の一般的な定義ですが「自社の製品やサービスを海外の企業や個人に対して営業活動をし、販売する」と言えるでしょう。そして販売方法には大きく3つあります。
- 現地法人などの拠点を展開し販売する
- 国内から販売代理店やエージェントを通じて販売する
- 日本から海外の企業、顧客へ直接販売する
このなかで僕が実際に仕事として行っているのは「日本から海外の企業、顧客へ直接販売」の方法になります。
また海外営業は大別すると以下の2つに分けられます。
ここの分け方は会社によって異なるのだと思いますが僕が働いている会社では上記のように業務内容を分けています。
海外顧客への営業活動というのは海外顧客への訪問だったり、商談、製品紹介、見積、営業サポートは製品の輸出業務や納期管理などになります。
海外営業の具体的な仕事内容
それでは海外営業の仕事を具体的に見ていきましょう。今回は大きく4つに分けました。
- 顧客との窓口
- 海外出張
- 新規開拓
- 通訳、翻訳
それぞれ詳しく解説していきます。
❶海外顧客との窓口
まずは「顧客との窓口」としての海外営業です。顧客との窓口という意味では海外営業と国内営業では大きな違いはありません。自社の製品を販売した顧客から製品に関する問い合わせが日々あり対応していきます。
主な問合せには以下のものがあります。
国内営業との決定的な違いは、当たり前ですがコミュニケーションがすべて英語で行われていることです。僕は北米以外にも北欧、ロシア、インド、中国、台湾など様々な国の顧客対応をしていますが、基本的にはすべて英語で行っています。
海外顧客とのコミュニケーションは英語が基本
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海外営業の特有な事として気をつけなければいけないのは、それぞれの国で商習慣やコミュニケーション方法などが違うということです。
たとえば、メールを考えてみても国内営業がメールをする際は必ず「お世話になっております」のような枕詞がつきますが海外顧客へのメールでは、そのようなものはありません。
海外営業ではメールの冒頭から結論や言いたいことをダイレクトに伝えます
また欧米は契約書を重視する傾向があります。基本的な取引、仕事のルールは契約書に従って行われますので、ある意味では非常に合理的で物事の進め方が早いです。
一部ロシアなどはサインは青インクでないと不可、のような場面もあり、多種多様な文化に触れることができるのは海外営業のひとつの良いところです。
海外営業の営業マンとしては世界情勢、ニュースにも気を配る必要があります。その国の政治状況、経済状況が取引や自社製品に影響してくるからです。
海外の出来事が仕事に直接影響をしてくる場合があるのでニュースが大切
最近の例でいえばロシアのウクライナ侵攻により各国が経済制裁を実施していて、輸出ができる製品に制限があったり、支払い方法に制限があったりします。
世界のどこかの運河の事故、火山の噴火などの自然災害、そういったものは自社製品の輸送に関わってきます。
海外営業の仕事では世界の出来事が自分自身の仕事に直接影響を及ぼします。
海外出張
海外出張を行い現地で顧客との商談を行います。電話やメール、WEB会議では決められないこと、重要なことはきちんとfact to face の会議をおこない交渉をまとめます。
たとえば、取引開始に関わる契約書の締結や最終確認、価格交渉などはそれにあたります。総じて重要案件の解決のための海外出張なので英語でのコミュニケーションを求められます。
また製品のトラブル対応のための海外出張もあります。自社の製品が起こしているトラブルの問題点を把握し、解決に向けて取り組みます。
自社の製品に問題がなければ、そのことをきちんと主張しなければいけません。本国へのレポートも非常に大切な仕事になります。
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新規開拓
海外営業には当然、新規開拓の仕事もあります。日本で市場調査、競合、需要調査を行い、ターゲットになる国と新規開拓先を決めます。そして電話やメールでアポをとり、プレゼンを実施するために海外出張をし訪問します。
なんだかんだ言っても、人と人とのつながりが大切です。直接会うのと電話やWEB会議でのやり取りとでは違いがあります。はるばる日本から来たということで心象が変わるものです。
なんだかんだ言ってもFact to Faceの人と人とのつながりが大切
自分の行きたい国を優先して新規開拓先を見つけて取り組む、そんな仕事への取り組み方も海外営業ならではかもしれません。僕はそれでオーストリアに行ってきました(笑)
翻訳・通訳
これは会社の規模にもよりますが、僕の会社の規模ですと基本的に英語に関わる案件はすべて海外営業にまわってきます。
そのため様々な分野に関わる英文の翻訳業務を行っています。またその逆に、他部門が海外顧客へ書類などを提出する際には英文への翻訳業務をしています。
海外顧客が来社した際には自分の仕事に関わるところはもちろんのこと、会議に出席している英語が話せない人たちに対する通訳としての業務もあります。
ここ数年は翻訳サイトなどの質があがり社内からの問い合わせが減っているように感じますが、それでもまだまだ翻訳、通訳としての仕事が求められる場面は多くあります。
海外営業サポート
海外営業の仕事には営業サポートという役割もあります。主には製品の輸出手配、貿易事務にあたるのがそれです。
自社の製品を海外へ輸出しますので海上便であれば港まで、航空便であれば空港まで搬入し、その後は輸出手配をしてくれる業者とのやり取りとなります。
営業業務を主とする人が輸出手配、貿易事務のことを知らなくていいということではありません。
実際には輸送費の観点から製品の見積などに関わってきますし、輸送のトラブルになった場合は、貿易事務の知識がないと話になりません。
貿易業務、輸出入に関わる知識を身につける必要があります。
海外営業という仕事のメリット
海外営業という仕事には様々なメリットがありますが、まとめますと以下4つのメリットがあります。
1つずつ解説していきましょう。
語学力(英語)を活かせる
海外営業のメリットのひとつは英語力を活かせることです。厳しいことを言うようですが僕の考えではたとえTOEICでどんなに高得点を取っていても英語を実際に使わないのであれば全く意味がないです。
海外営業では顧客とのやり取りはメール、チャット、電話、WEB会議、すべて英語になりますから、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキング、全ての能力が上がり英語力に磨きがかかります。
もしかするとそれはTOEICなどの得点をあげる知識とは結びつかないものかもしれませんが、英語を使うリアルなビジネスの現場では役立つものです。
英語は生活の一部になるので、海外記事、動画などを読んだり視聴することにも積極的になります。
>>車通勤の時間を有効活用!音声だけで出来る英語の勉強方法3選!
希少性(市場価値)があがる
僕が考える海外営業のメリットの2つ目は、会社員としての希少性を高めることが出来るところです。「希少性が高い」ということは人が持っていないスキルや経験、実績があるということです。
さらにそれらを掛け合わせることで、さらに希少性を高めていくことができます。海外営業で得られるスキルや経験には以下のものがあります。
- ビジネス英語
- 海外出張経験
- 海外マーケットの知識
- 海外商習慣の理解
- 貿易業務の知識
これらを掛け合わせながら自分自身の会社員としての希少性をあげて、市場価値を高めることができます。市場価値の高さを測るひとつの尺度が年収だとするならば海外営業の仕事は市場で高く評価されています。
日本の正社員の給料分布を見てみるとボリュームが多いのは326〜403万円。海外営業の仕事の平均年収は約489万円なので日本の平均年収と比較すると高い傾向にあります。
※日本の平均年収:国税庁の令和2年度「民間給与実態統計調査結果」に基づく。
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海外のダイナミズムを感じる
3つ目のメリット。海外営業の顧客は世界中にいます。そのため世界情勢に関する問題やニュースは直接自分の仕事に関わってきます。
もちろんそれは海外の経済的なことばかりでなく政治、国際関係、地政学的リスク、テクノロジーなど多方面に及びます。
そういう海外のダイナミズムを感じることができるのは海外営業の大きなメリットのひとつです。
海外出張に行ける
海外出張や異文化経験ができることが海外営業の4つのメリットです。僕は仕事でこれまでに12か国に行ってきました。
海外出張ではうまくスケジュールを調整すれば観光地を訪れることができます。また観光地でなくとも訪問した都市や街を散策したり、地元のスーパーで買い物したり、料理を楽しんだりと、その国々の日常生活、習慣、文化に触れることができます。
上の写真は、最近アメリカ出張をすると必ず行ってしまうステーキハウス店です(笑)
海外営業という仕事のデメリット
海外営業という仕事のデメリットは3つあります。
- 時差とカレンダーの違い
- 商習慣の違い
- 日々の勉強と情報収集
それぞれ解説していきます。
時差とカレンダーの違いがつらい
世界各国に点在する顧客を担当するのでカレンダーと時差の違いに苦労します。カレンダーで言えば、各国の夏休み、年末年始など長期休暇の時期が異なります。
欧米諸国は6~7月頃になると夏休みが始まり、12月にはクリスマス休暇があります。一方中国では日本の正月あたる春節(旧正月)は1月末~2月初旬にあります。
そのため、年末は社内中が慌ただしくなっていますが海外営業は少し落ち着いています。
逆に日本の長期休暇の間は海外は稼働してるので、休暇明けはメールや問い合わせがどっさりと届いていて、社内がゆっくりと動き出すなか、海外営業は初日から大騒ぎということがあります。
海外営業は長期休みの港のスケジュールも気にかけないといけないんです
時差で言いますと欧米諸国が動き出すのは日本が夕方になってからです。社内の1日が終わり始めている頃に海外営業にはメールが届きはじめ、にわかに慌ただしくなったりします。
WEB会議などがあれば20時、21時まで事務所に残っていることもあります。
商習慣の違い
各国にはそれぞれの商習慣があります。日本人同士であれば分かり合えることが、簡単には分かり合えないことがあります。あるいは相手も英語が第2外国語となる場合はコミュニケーションはとても難しいものになります。
そんな状況の中での海外とのビジネス。日本国内の取引であれば許されるようなミスも海外顧客とでは莫大な損失になる場合があります。
海外営業には高いコミュニケーション能力が求められるのと同時に、大きな責任も背負わされるのです。
日々の勉強と情報収集がきつい!?
これまでメリットとデメリットを挙げてきましたが、ある意味でメリットとデメリットは表裏一体のものです。
「英語を活かせる」「世界のダイナミズムを感じる」それらがメリットである一方、それはつまり日々の英語の勉強や海外のニュースに敏感であることが求められているというデメリットでもあります。
もちろん、このことをデメリットとして受け取るかは本人次第です。
僕自身はこれまで楽しんでやってきていますし逆にそここそが海外営業という仕事の魅力的でやりがいのある部分だと思っているので「メリット」としてあげています。
ですがある人にとっては「きつい」「大変」というデメリットに感じるかもしれません。
海外営業の具体的な仕事内容とメリットデメリット
今回は僕自身の仕事である海外営業の仕事内容、メリットやデメリットについて解説をしました。
まとめてみますと、国内営業と同様に一般的なコミュニケーション能力やプレゼン能力が必要であり、海外への製品の輸出にともなう貿易業務の知識、文化の多様性への理解、国際情勢の情報収集、など多岐にわたる仕事であり、多くのスキルと知識が求められることを感じたかと思います。
- コミュニケーション能力
- プレゼン能力
- 貿易業務の知識
- 文化の多様性への理解
- 国際情勢の情報収集
- 英語力
こうして言葉にすると、もしかすると非常に難しい仕事と思われたかもしれませんが実情はそれほど大したものでもありません。
他の仕事と同様に、その仕事に従事していれば自然と身についていくものです。しかし1点だけ、どうにもならないものがあるとすれば、それは英語力です。こればっかりは自然には身についてきません。
ただ逆を言えば英語力さえ身につけば誰でもできる仕事です。今後、グローバル化がますます進んでいくことは不可避であり、海外営業のスキルや知識の価値は必ず上がります。
今のうちに英語力を身につけて海外営業として働くことはあなたのキャリアを魅力的なものとし、海外で得る様々な経験は人生を豊かなものにしてくれることは、僕自身の経験から間違いありません。
海外営業という仕事が求める英語力については以下の記事で解説しています。
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