英語の精読をすることはゆっくりと生きることに似ています。
そんなことを急にいわれても、いったいどういうことだと思われたことでしょう。
ですが、本記事を最後まで読んでいただければ、きっと共感していただけると思います。
まずはその前に本記事では以下の疑問に答えていきます。
・精読ってどういう英語学習法なのだろう?
・精読の正しいやり方ってあるの?
・好きな洋書でも精読はできる?
僕は海外営業歴が20年、毎日英語を使って仕事をしています。また趣味の読書を英語学習に取り入れたくて日々、英語の精読にも励んでいます。
本記事を通して精読の基本情報だけではなく、その奥深さや魅力も感じていただければうれしいです。
英語の精読とは?
英語の精読を考えるまえに、そもそも日本語における「精読」とはどういう意味なのでしょうか。
『「読む技術」養成講座【第一回:精読…きちんと正確に読む】国立国語研究所教授・石黒圭氏寄稿』という記事より引用させていただきます。
「精読」はすでに述べたように、文章を細部まできちんと正確に読むことであり、「精読」にさいしてもっとも重要なことは、文の構造を正確に把握することです。
出典先:「SCIENCE SHIFT」より引用
もしそうであるならば「英語」における「精読」とは、単語の意味、文法、文の構造、この3つを正確に把握、理解することだといえます。
- 単語の意味
- 文法
- 文の構造
その結果、精読は文章を正確に読み解く力を身につけさせてくれます。
一方でよく耳にする「多読」は精読の対義語になります。
先ほどの精読とは逆に、単語の意味や文法、文の構造の正確な理解はせず、たくさんの英文を読むことで英語に慣れることを目的としています。
精読も多読も英語のリーディング力を向上させる効果がありますが、アプローチの仕方が異なる点に注意が必要です。
もし精読と多読のどちらから始めればいいのかと迷っているのであれば、英語学習の初心者の場合は精読から始めることをオススメします。
まずは精読で基礎的な単語力や文法知識を身につけてから多読を行ったほうが、効率的であり効果が大きいからです。
英語を精読するメリット3つ
英語を精読するメリットには3つあります。
- 単語や英文法、英文の構造への理解が身につく
- 英文を読むスピードがあがる
- 英文を書く力が身につく
それぞれ見ていきます。
単語や英文法、英文の構造への理解が身につく
英文を精読することで単語や英文法、そして英文の構造への理解が身につきます。
なぜでしょうか?
それは以下の理由からです。
- 知らない単語の意味を辞書やインターネットを使って丁寧に調べるから
- 英文の主語や目的語の位置、単語の修飾関係を意識してゆっくり読むから
単語は単語リストだけで覚えていくよりも、英文のなかで覚えていくほうが記憶に残りやすく身につきやすいのは誰もが経験していることだと思います。
また英文については1つ1つ丁寧に主語、動詞、目的語、補語を意識して読むことにより文法の知識が深まり、身についていきます。
それらをくり返すことにより、しだいに単語や英文にも慣れていき、英文の構造も読んでいく中で自然と浮かびあがるようになっていきます。
英文を読むスピードがあがる
精読は英文を1つ1つの単語の意味、文法、文の構造を理解しながらゆっくりと読んでいくトレーニングなので、どうして英文を読むスピードがあがるのか不思議に思われるかもしれません。
ただ精読をくり返すことにより
ということが起きるようになります。その結果として読むスピードが自ずとあがっていくというわけなのです。
英文を書く力が身につく
精読をくり返し行うことによって単語の意味、文法、文の構造の理解が進むことから英文を書く力も身についていきます。
ビジネスで英文メールやプレゼン資料を作成するときに役立ちます
もちろん、TOEICなどの試験でライティングが必要な方にも精読は役に立ちます。
精読の効果はリーディング力の向上だけと思われがちですが、正確な英文を書くための基礎作りにもなっているのです。
英語精読の正しいやり方
ただ文章を読むだけでは精読になりません。正しい精読のやり方を紹介します。
じっくりと読んでいき、わからない部分はチェックする
まずはざっと英文を読んでいきます。
ここでは自分が知らない単語、苦手としている語彙、文法、構造に気がつくことが目的です。「わからない」と感じたところは、こまめにチェックしていきます。
そして読み進めるときは、以下のことを意識して精読を行います。
わからないところはチェックしておくと後で確認するときに見つけやすいです。
わからなかったところの意味や構造を調べる
最後まで読み終わったら、次にわからなかったところを調べていく作業になります。
単語や語彙を調べる
辞書や参考書、インターネットを使って単語の意味や語彙を調べていきます。
単語を調べた後にあらためて英文を読んでみた結果、意味が分かるようになったかもしれません。その場合、自身の語彙力不足によって最初は読めていなかったということになります。
文法や構造を調べる
英文の構造は、S(主語)、V(動詞)、O(目的語)、C(補語)、M(修飾語)に分解して英文の下に書き込んでいくと、文の成り立ちが目で見えるようになり理解がしやすくなります。
単語の意味や文法、構造の解説がついている英文であれば、自分の解釈が正しいかチェックしていきます。
その場合、解説を読む前に出来るかぎり前後関係から推測をした上で解釈をチェックすると定着がしやすくなります。
もし、どうしても自分だけでは解決できなかったり、解説を読んでも理解できないところがあれば、オンライン英会話のサービスを利用して教師に質問するのも良いでしょう。
もう一度、同じ英文を最初から読む
わからなかったところを調べる作業が終わったら、もう一度、同じ英文を最初から読んでいきます。
わからなかったところは十分に時間をつかって調べてあるので、1回目よりスムーズに理解が進んでいくと思います。
もしここで理解がスムーズに行われていないと感じたときは、再びこれまでの手順をくり返し理解を深めてください。
この作業をくり返し行うことによって、調べたことが英文を読むと同時に頭に流れ込んでくるようになり、英文を読むと同時に英文が理解できるようになります。
英語精読の3つの注意点
精読には3つの注意点があります。
- 教材の難易度が合っていない
- すぐに答えを見てしまう
- 速読しようとしてしまう
それぞれ見ていきましょう。
教材の難易度が合っていない
精読においては教材の難易度はとても大切です。教材は自身の英語力より少し上のレベルを選ぶようにしてください。
これまで精読について書いてきましたように、精読ではわからないところを明らかにして、じっくりと単語、文法、構造を1つ1つ分解していくことに目的があります。
自分にとってわからないところがないレベルの英文は、それは精読ではなく多読で使った方が良い教材と考えてよいことになります。
その逆に、いくら調べる作業が大切だからといって、たとえば学術書のような難易度が高すぎる教材を選んでしまってはチェックだけで時間がかかってしまうことになってしまいます。
自分にとってちょうどいい英文レベルのものを選びましょう。
すぐに答えを見てしまう
精読は、わからないところを明らかにして、じっくりと取り組む作業です。答えを見ることが、どうして注意点となるのでしょうか。
それは英語学習において推測することもまたとても大切だからです。
推測することによって養われるのは、
です。
これは、英単語を英語のままのイメージで理解することでもあり、英語学習者にとっては理想とするところでもあります。
僕たち日本人だって日本語の単語すべてを知っているわけではありません。ましてや母国語でもない英語の単語をすべて記憶しようというのは無理な話です。
自分で考え、単語の意味を文脈から推測する力も身につけましょう。
速読しようとしてしまう
精読の一連の作業はとても地味なので「もっとたくさんの単語や文法を覚えなきゃ」と焦ってしまうかもしれません。
ただそこはじっとこらえて、この単調とも思える作業をくり返し、そして楽しみましょう。
地味ではありますが精読は着実に英語力を身につけさせてくれる学習法です。
基礎的な英語力を身につけることで結果的に読むスピードに効果がでたり、英語を英語のまま理解できる力が身についていきますので焦らずに地道にできることをやりましょう。
精読のオススメ教材|村上春樹作品『象の消滅』
さて、精読のための教材。当記事では『村上春樹「象の消滅」英訳完全読解』をオススメします。
村上春樹「象の消滅」英訳完全読解
なぜなら僕が村上春樹のファンだからです
驚きましたか?もっと真面目な参考書のような本の紹介がされると思いましたか?
ここでは、そんなことはしません。ですがもちろん、理由は他にもあります。
- 英語と日本語の表現の違いが精読で味わえる
- 見開きで左に英語、右に日本語があり読みやすい
- 次のページには単語、英文構造の解説がある
特に英語と日本語の言葉のニュアンスの違いが味わえるところが精読にオススメしている理由です。
まるで趣味のように時間を忘れ、日常の喧騒から離れて静かに英文を1つ1つ精読するというのも悪くはない感じがしませんか?
そんな趣味としての精読をしたいあなたにはオススメの教材です。
『村上春樹「象の消滅」英訳完全読解』
NHKラジオ『英語で読む村上春樹~世界のなかの日本文学』(2013年度前期放送分)の
単行本化です。
英語精読の効果が見える場面
英語精読が目に見えて効果を発揮している場面があります。それは「ビジネスでフォーマルな文章を読むとき」です。
精読で行っている英文を1つ1つ正確に理解をしていく力は、ビジネスでフォーマルな文章を読むときに役立ちます。
ビジネスにおけるフォーマルな文章といえば、
などがあります。
契約書の英文の理解を誤ってしまっては会社に多大な損失を発生させたり、信頼を失ってしまう可能性がありますので、あなたの精読の力を発揮する場面です。
英文に慣れないうちは、きっとたくさんのチェックをすることになりますが、フォーマルな文章というのもまた決まりきった表現を使用しているものです。
精読をくり返すことによって自然と英文を理解する早さも正確さもあがっていきますので焦らず取組みましょう。
自分の理解が正しいかどうか不安を感じている場合は、オンライン英会話の教師に質問することをオススメします。
このような場合のオンライン英会話として僕はBizmatesをオススメしています。なぜならBizmatesはビジネス英語に特化していて、教師も英語でのビジネス経験が豊富だからです。
「Assist Lesson」というプログラムで、持ち込み教材でのレッスンが可能なので、困ったら試してみてください。
>>Bizmates(ビズメイツ)の評判・口コミを実際にビジネスで英語をつかっている僕が分析してみた!
精読のススメ
本記事では精読のメリット、正しいやり方、注意点を解説し、最後に村上春樹作品を教材として紹介してきました。
くり返しになりますが精読は地道で単調とも思える作業を行う英語学習法です。
アプリを使ってゲーム感覚で行う英語学習や、オンライン英会話でにぎやかにコミュニケーションをする華やかな英語学習とはちがいます。
ですが、ときには英文と、ひとり静かに向き合うといった英語学習も良いのではないでしょうか。
本記事が、そんな大人の学習時間のきっかけになれば幸いです。
英文と静かに向き合うには詩もまた精読にオススメです。こちらの記事が参考になると思いますのでぜひ。